* 雪華 -YukiHana-
  
  
  
  
『今日はこの冬一番の寒さとなるでしょう。
体調管理には十分気を付けてください。
それでは続いて、結野アナのブラック星座占いでーす!』

「なんだよ、今日は冷えんのか‥‥」

せっかく『アイツ』と会えるってのについてない。

そんなことを思っているのはこの家の主であり、万事屋店主でもある坂田銀時だ。

「僕たちそろそろ姉上の所に行ってきますね」

「銀チャンはニコチンコに旨いもん食わせてもらえるアルか?
 いいなー、銀ちゃんだけズルいネ!」

「だ、だめだよ神楽ちゃん!!
 そういうことは言っちゃ駄目なの!そういう決まりなの!」

神楽はつっこむ新八を睨み、

「うっせーな童貞ダメガネ」

とだけ静かに呟いた。

「だァァアアァァァ!!いま童貞関係ねぇだろーがァァァ!!」

‥‥‥うっせーな童貞!!と神楽はもう一度新八を一蹴し、

「じゃあ銀ちゃん、いってくるネ。
 マヨラーに可愛がってもらうアルヨ〜」

と言って、取り乱すツッコミの襟首をガシッと掴み、家をあとにした。

なんというか、銀時と土方は何故か万事屋ファミリー公認の仲なのである。 

「可愛がるって‥‥」

銀時は軽くため息をついた。


ガキはやっぱり鋭いな‥‥‥


俺らの関係図まで把握してやがるのか。


つーか‥‥‥アレ‥‥‥?‥‥

神楽にこんな関係がバレてるってやばくね?

教育上かなりヤバくね?

よく考えたら、新八にしたってまだ(ツッコミ担当の為忘れがちだが)16歳の男の子、思春期真っ盛り。
その多感な時期に‥‥‥‥‥って‥‥

「あ゛ー!つーかなんで俺がこんな考え事してんだよっ 何やってんだ俺ェェェェェ!!」

銀時は頭を抱えた。
これじゃあまるで、真顔で考え事をするがその考え事が既にダメな男、すなわちマダオである。



でも‥‥‥、そんなこと言ったって‥‥‥‥


「手離せるわけねぇじゃねーか‥‥‥‥」


思わずそう呟いてしまったその時、










「ったく‥‥、なに一人で騒いでんだよ」










突然、目の前から低く響く聞き慣れた男の声がした。

















「‥‥ひ、土方‥‥‥‥ッ‥お前、なんで‥‥‥?!‥!!」













「返事がねぇから勝手に入らせてもらったぞ。大体、鍵もかけずに何してんだテメーは‥‥」

「な、なんでもねぇって」

「めずらしくお前の思慮深〜い顔を見させてもらったぜ。今日は雪でも降るんじゃね‥‥‥って」

そう言って窓の方を向いた土方は、珍しく驚きの表情を浮かべた。
そんな土方につられて銀時も窓の方を向いてみる。

すると―――



「雪‥‥‥‥‥‥」



銀時は 思わずそう呟いてしまった。

「寒いとは思ってたが、雪降るなんて聞いてねぇぞ」







 雪‥‥‥  







銀時は何故か窓を見つめて動かない。
窓の外には、粉砂糖のように細かく儚(はかな)げな雪がちらちらと舞っていた。











灰色の空、白い雪‥‥そして、





――――――赤い血痕。













銀時の脳裏にはあの時の光景が生々しく浮かんでいた。






大好きだったあの人が突然いなくなったあの日も、こんな雪雲が浮かんでいたような気がする―――







「銀時、どうかしたか?」

銀時は土方の言葉でハッと我に返り、慌てた様子で取り繕った。

「‥‥‥ぇ、あ‥‥いや、別に‥‥、‥‥つーか何かおごってもらおうと思ってたのに、これじゃ出かけらんねぇじゃん。」

損した気分だぜ、といつもの調子で文句を言う銀時。

しかし、土方の心には先程の彼らしくない物憂げな顔が妙にひっかかっていた。




「銀時‥‥‥」



土方は立ち上がり、向かいのソファに座っていた銀時の隣に座り直した。

「‥‥な、なんだよ‥‥‥‥、‥‥」

土方は横目でこちらをうかがう銀時の顔を強引に引き寄せ、唇を奪う。


「‥‥‥‥んんッ‥‥っは、ぁ‥‥‥ちょ、何‥‥?‥んっ‥‥‥‥」


戸惑う銀時をよそに土方は銀時の口腔にそろりと舌を忍ばせる。
最初は抵抗していた銀時だったが、その感覚に 次第に身体からは力が抜け、土方に身を預けるような体勢になっていた。
しかし、土方の手が銀時のどてらにかかると銀時の表情は一変する。


「待て、・・おま‥‥‥っ‥‥今からヤんの‥‥?!‥‥」

「‥‥‥‥そーだけど?」

銀時の問いに、土方が平然とした様子で答えると、銀時は慌てて土方の下から抜け出そうと もがき始める。

「逃がすかっ!!」

そんな銀時を土方は無理矢理ソファに押しつけ、自分もその上に覆い被さる。













「なんで逃げんだよ‥‥」













土方は銀時の左肩に顔を埋め、耳元で囁く。
すると銀時は、身体をビクンと震わせ、バツが悪そうに

「だって、メシとか風呂とかまだやんなきゃいけねぇことたくさんあんのに‥‥」

と擦れた声で呟いた。











「‥‥‥無理してんじゃねーよ」









「は?‥‥‥‥‥」









静かに呟いた土方は銀時の目をまっすぐ見つめた。





















「今は全部忘れろ、俺のことだけ‥‥考えてろ‥‥‥」



























「‥‥なッ‥‥‥!‥‥」

臆面もなく伝えられた言葉に銀時が顔を真っ赤にしてうろたえている隙に土方は銀時のどてらを器用に脱がせた。














     *  *  *















「ぅ、あ‥‥んぁ、はァ、も‥ゃあ、ッ‥‥ん、んぅ‥‥」

いつにも増して荒々しく求めてくる土方と、感じ過ぎてしまう身体を恨めしく思う間もなく、銀時は土方に呑まれてく。


「銀‥‥、好きだ‥‥‥」


欲情に潤んだ瞳で囁かれるその男の声色に切羽詰まったものを感じ、銀時の胸は一層高鳴る。




「んあ‥は、ぁ‥っ‥‥ぉ、‥俺も‥‥んぅ、‥すき‥‥すきだ‥、と‥しろ‥‥ぁ、あぁ!‥‥」




身体の奥に熱いものを叩きつけられた瞬間、銀時の理性は呆気なく霧散してしまった。












 ☆












「ったく‥‥‥‥‥」
「あ゛、なんだ?」
「腰痛ェ、喉痛ェ、頭痛ェ!!」
キッと睨み付けてきた銀時に、土方はバツが悪そうに呟く。
「あー、ついつい‥‥な?」
「な、じゃねぇよ!!どうすんだよ、まだ8時だぞ。だるくて動く気しねーし‥‥」

そう呟いた時、隣に寝ていた土方が銀時に擦り寄ってきた。
銀時が土方のいないほうに身体を寄せると土方はムッとした表情を見せる。

「また逃げんのか‥‥」
「銀さんの学習能力なめんじゃねぇぞ まじで身体だりィんだって」
「だったらまた寝りゃいいじゃねーか」
「‥‥ッ‥、テメー‥いっぺん三途の川に送られてーのかコラ」
「そっちの寝るじゃねぇ‥‥睡眠だよ、す・い・み・ん!! 変なこと考えてんじゃねーよ変態が」

その言葉に、銀時は顔を真っ赤にさせて起き上がった。

「変態に変態なんて言われたかねぇよ!!!このド変た‥‥‥!?」





怒鳴ろうとした銀時は一瞬眉を潜めた後、ゲホゲホと咳き込んだ。











「その変態に喘がされて声枯らしてんのはどこのどいつだ‥‥」

ため息をついて、微笑んだ土方は咳き込む銀時を座らせ、そっと布団を掛けた。


「‥‥‥‥今日はもう寝ろっつーか俺が寝てェんだよ‥‥」

「‥‥‥‥‥‥」

銀時は不機嫌そうな顔をして土方の方を向こうとしない。




「‥‥‥なぁ、銀時‥‥‥‥」
土方は銀時の背中に顔を寄せ、くぐもった声で声を掛ける。


「‥‥‥なんだよ‥」

銀時は少し考えたあと返事を返した。
あまりふてぶてしくしているのもどうかと思ったのだ。

そんな銀時の身体に土方は背後から腕を絡める。














「お前、さっき嫌なこと思い出してたろ?」

そう尋ねた瞬間、銀時の身体が一瞬硬直したのが分かった。
動揺を隠しきれない銀時の声は少し震えており、自分の読みは間違っていなかったことを土方は悟った。




「‥‥‥‥さ、さっきって?」


「俺が抱く前‥」

「‥‥なんで‥‥・・・・・・・・・・・・・・・‥‥」

「なんとなく」




「‥‥‥‥‥‥‥‥」


淡々と答える土方に、銀時は返す言葉を見つけることができなかった。

「‥‥まぁ‥‥言いたくねェなら別に‥‥‥、」

そう言いかけた時、土方の腕にそっと手が添えられ、土方は言葉を止めた。
土方は反射的にその手を掴み、自分の指を彼のそれに絡ませる。



















「わりィ‥‥今は‥‥‥‥‥」





銀時は蚊の鳴くような声でそう呟いた。
そんな銀時を安心させるよう、土方は銀時を抱き締める腕に力を込める。






「あぁ‥‥いいよ‥‥‥」

やさしく抱き締め、受け入れてくれた土方の温もりに、
銀時は思わず 声をあげて泣きたくなるような、そんな衝動に駆られた。
















「土方‥‥‥‥お前は、ずっと俺のそばにいろよ‥‥‥」










銀時は擦れた声で呟くと、土方の腕の中で身体を反転させ、自らも目の前の男を抱き締める。

















「お前こそ、逃げんじゃねーぞ‥‥」


土方はそう呟き、銀時の唇に自分のそれをそっと重ねた。


















銀時の過去になにがあったかなんて
そんなことを言及する程自分は愚かな人間じゃない。


でも――――――





そのせいでコイツが今、苦しんでいるのなら






‥‥‥‥俺はコイツを助けたい。










大切だから

    好きだから

         ずっと俺が、守ってやりたい。




























「おやすみ、――――――――― 銀時‥‥‥‥」









腕の中ですやすやと寝息をたてる銀時の猫っ毛を撫でながら



土方も その双眼をそっと閉じ、眠りにおちていったのだった。



                     
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